KOBECCO(月刊 神戸っ子) 1961年7月号
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芥申ズNo.5シリ1401川上了子神戸は昔から外人が多かったせいか、おいしい洋菓子を売る店が多い。私は別に左党でもないのに、どうしたことか生れつき甘い物に魅力を感じない方で、小さい時も甘いお菓子類より、むしろおカキやおせんくいなど塩っぱい、あっさりしたモノの方が好きで、特に洋菓子の台に使われているスポンジ・ケーキなどは嫌いな方に属しているくらいだった。ところが私の友人で、これはまた無類の洋菓子党がいて、その人と仕事のことで親しくお交際いするようになってから、その人の影響をうけてかいつしか私も洋菓子の美しさ、そしておいしさを知るようになり、特に季節感を盛ったフルーツケーキにふれると新鮮な気持になり、洋菓子の魅力にすっかりひかれてしまうようになった。元町や三宮など歩いていて、清潔な店先きに美しく飾られたケーキが並んでいるのは見ただけでも楽しいものだ。歩き疲れた時など香り高い紅茶にそえておいしいケーキを頂くと、疲れや、そして日々のわずらわしい悩承もしばし忘れ、何とも云えない満足感にひしひし包まれる。と云えば、何んとオーバーな表現といわれるかも知れないが、真実そんな気がしてくる。地方へ旅行した時など、町々で同じように美しくデコレーションされたケーキにひかれて口にすることがあるが、今ごろはさすがに蝋くさいバター・クリームには出くわさないまでも、甘すぎたり、何んとなくパサパサして物足らなかったりして、ああやっぱり神戸はいいなあと感じるのは私だけだろうか。そしてさすがは神戸のケーキだと、帰って来る早々G線にかけ込承、プラム・ケーキなど買って来て、ラム酒にならされた果物の味を舌の上で楽しむと云えば、私はやはり左党なんだろうか。(弱年度代表ミス神戸)戸の洋菓子神戸の洋菓子

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