KOBECCO(月刊 神戸っ子) 1961年6月号
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グラスが男ばかりの席を右から順に廻され気楽な雰囲気をつくります。シガレットも正餐の席では許されず、ここではじめで喫うことができます。ところで話をご婦人のほうへ移して、彼女たちが次の間へ退席した。その応接室を名づけて、退ぞく室と呼ばれるようになったという一説もあるのですが、事実はそんなナマヤサシイものではありまqH騨笥』口函(ドローイング)という言葉は、本来〃ひっぱる″という意味であるのに、その部屋骨騨昌品HOC目(ドローイングルーム)がどうして客間と呼ばれるのか、あなたご存じでしょうか。これは実にイギリス有産階級の酒宴から生まれた熟語なのです。いまでも欧米ではデザートを終えてしばらくすると、ジャマつけな女性が、(ごめんなさい、これはアチラの話なんです)別室へ移され、このときを待っていた男たち、すなわち、どこへ行くにもウルサイのがついていてどうにもならないアワレな男性諸君は〃さあ待ってました″とぽかり、女が好まない政治の話や〃まあ、イヤラシイ/″と腕をツーネラレそうなケシカラヌ話をはじめるのです。そして、このときにボルト酒(ポルトガル産の本場ポートワイン)の洋酒はなしのタネ藤本義一え。佐々木侃司・ミントフラッペ冒旨庁両国もむ①ミントは・へパーミントのこと。フラッペとは、コマかくくだいた氷の上からこれをかけ、ストローでチューチュー吸うティンエージャー・スタイルのカクテルです。バイオレットをつかえばバイオレットフラッペ・カカオをつかえばカカオフラッペ・ポートワインならポートフラッペになります。せん。酔いが廻ってきたそれぞれの亭主からのがれてご婦人たちが次の間へひきさがると、これを待ち受けた馬丁たちは、自分のつかえる主人のツレアイを窓から抱いてひきづり出し、まず何はともあり馬車で邸宅なり居城なりへつれ帰ったというのです。ドロウイングの言葉そのままにひきずり出す部屋であったのが食堂につらなった応接室。豪華な夜4141会服に身を飾り、宝石をキラメかした貴婦人たちが、酔っぱらいの夫(おっと)からのがれて、窓から馬丁に助け出され、ホウホウのテイで逃げ帰ったというのは、近頃だんだんキュウクッになってきた私たち男性にとって、まったく胸のスッとする話ですナ。もちろん彼女たちは自分の寝室へ避難するとすぐに鍵を堅くおろし酔ドレ城主の侵入をふせいだというわけです。忠実な馬丁たちはこうしておいてただちに宴会場へとって返し、食卓の下にブッ倒れているそれぞれのご主人様をかつぎあげ、馬車にのせると堂々と帰館の途についたlと、まあこういうような次第で、ドロウイング・ルームの語源、嘘のような本当の話でした。オシマイ。カクテルの作り方

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