KOBECCO(月刊 神戸っ子) 1961年6月号
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の方がエレガントですよ何しるマルセイユの起源は西歴紀元前七百年にさかのぼらねばならぬのですから、港町には旧くきたないところも多い松井文化的な匂いというものも余り強くないんですか小松そりゃね、昔から伝統的に詩人、画家、劇作家などがグループを作っているだけにね、匂の高いものがありますが、それも一部的ですよ。文芸雑誌は二つばかり出ていますが、長い歴史を持っています。しかしそれが対社会的にどうのこうのといった影響はありません松井繁華街といったところで、神戸の元町や三宮のようなところはあるんでしょうか小松海から真っ直にのぼっている相当広い町筋があります。その町の途中に二、三右と左に繁華街てのようなところがあります。古街の横丁の繁華街といったようなものです。だから元町やトァ・ロードなどの方がはるかにキレイです一ようランスの国際観光地松井マルセイユの街全体の感じはいかがですか小松とてもいきいきして、活気があります。どちらかといえば、神戸より大阪の空気じゃないかな地中海第一の港だけに貿易が盛んでその額もフランス一でしょう。世界相手の貿易港ですからね。アルジェリアまで船で一昼夜、空路で二、三時間。芝居はあんまりはやらないところですね。音楽会も大して入りません。その代りオペラがすごく受ますね松井やはりイタリア的ですね。あちらの人たちの服装は……小松パリにくらべれば、大変ヤボッたい感じです。とにかく暖かいところですから、冬などでも、オーバーなどはいらぬ時があります。マルセイユはフランスの国際観光地であり、リヴェラのサン・トロペーズン、カンヌ、ニース、モンテカルロなどにしょっちゅう観光バスが行ってますでしょう。承な一応マルセイユを通るわけです。汽車でも船でも飛行機でも外国人の往来がなかなか激しいんですよ。北東に一時間位のところにセザンヌが生まれて、死んだエックスというところがあります。ここはローマ時代の町です。ゾラもここの出身だし、音楽家のダリュス、ミローもここに生れている。その北西にはアルルがあり、ゴッホの絵で有名です。その他古代の名所旧跡がたくさんあります松井神戸のようにマルィイュも住承よいところですか小松そうですね、やはり南仏ですからね、お天気の時は実にいいですよキレイですしね。ただマルセイユは〃ミストラル〃というきつい風が吹くんですよ。それともうひとつ〃シロッコ〃という不愉快な風が吹くんです。これはアフリカの砂漠から吹いてくる風なんですだから砂ホコリがひどく、むんむん暑い。これらもマルセイユの名物でしょうね松井マルセイユ人は、きっすいのフランス語で…小松大体フランス人は外国語を得手でないし、また外国語を話すのをむしろ恥としているようなところがあり、マルセイユには昔から伝っている語があって、マルセイユ人のあいだではその言葉が使30つですね。マルセイユは緑の山に恵まれた神戸と違って、岩山がとても多いそうですね。小松だから海から見える背景は神戸のようにあまりキレイじゃない。六甲山塊のような禿山が多いまず一番はじめにマルセイユの沖にかかってくると、港外ではデューマが書いた『巌窟王』が閉じこめられたという伝説の島、イーブの島の近くを通りますよ。そして丘の上には聖母マリア(ノートルダム)を祭っている教会がある。すっかり岩石で出来た小山です。摩耶山よりずっと低い。そこにあがるにはケーブルです。海から見たマルセイユを想像されるには、セザンヌが描いた有名な更スタクト風景』lこれはマルセイユから少し離れたところの町なんですが、この「エスタクト風景』の復製をごらんになりますと地中海の海の色、マルセイユ近辺の風景のイメージが心にうかんでくるでしょう。マルセイユ自体についていえば、古いだけで、街そのものは余り「キレイだな」と思うところはありませんね。しかし、そのキレイでない古いきたならしい場所がとても魅力がある松井風景で、どこか神戸に似たところはないのでしょうか小松ちょっと神戸地理的条件は違いますね。むしろ神戸は香港に似てますよ。似ているところは、どちらも港街であること、それら国際色、人口は百万足らずと地理辞典にかいてあるが、もう少しあるでしょう〃夜の港町″の方は、マルセイユの方がずっとうすぎたないって感じですね。気味の悪いところがちょいちょいある。神戸

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