KOBECCO(月刊 神戸っ子) 1961年3月号
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易「なに、牛を盗られた?」春山村駐在所の梅野巡査は、早朝、村人が届け出た盗難被害品が蕊聞くと鱗蝋し噌護。ば直ぐ眠ってしまうんだものlと葉子は、いかにも確信ありげに鏡の中へいたずらっぽく笑った。葉子が部屋に戻ると、まるで葉子を待っていたかのように、女中たちが食事を運びこんでくると、塩見は、葉子に差されるまま、酒をぐいぐい飲んだ。翌朝、正午近くなって、「昨夜、塩見さんからオ電話いただいたの、今夜、ふんなで一泊するようにって:…・」、といって現れた勤め先の同輩、由美や薫たちに起こされた葉子は、枕許の塩見の置き手紙を見て、やっぱり、パパは立派だわI。と涙ぐんでしまった。その日の午後、「パパ、変よ・今朝、社長さんから、碁のオ相手にって、オ誘いのオ電話があったのよ、ねパパ、変だとオ思いにならない……」須磨の自宅に戻った塩見は、い速、娘の千恵子に、パパ、パパ、牛のスピードが鍵●厚木冬三画東西十キロ、南北十五キロの春山村は、戸数約五百戸の純農村だが、神戸に移出して、いわゆる神戸肉となる牛の飼育地として有名なところである。神戸肉は、いうと責め立てられるように呼ばれ、当惑しながら、トポケル以外に手がなかった.だが、「千恵子、あなたこそ変よ・さアオ父さまオ疲れなんだから、いい加減になさい」とかばってくれる妻の屈託のない微笑を、塩見は美しいと思った。それだけに、ひとときでも、妻や娘を裏切ろうとした塩見の心は、あらたな悔に癖いた。その夜、床についた塩見は、今夜も武田尾の温泉宿で、由美や薫たちとはしやぎたてているに違いない葉子をおもいながら、若い葉子を傷つけなかったことを、ひそかに喜ぶのだった。すると。どうしたことか、全く突然、塩見は妻の肌の匂いが堪らなく恋しくなってきた。。…:、そんな夫に抱かれながら、四十八才という年令に比例した夫の肉体的な習慣を熟知している妻の知子は夫を疑いかけ愚かな自分を恥じながら涙を光らせた。■旬祝倉リ刊「神戸っ子」1441太陽製版KK神戸市兵庫区湊町一丁目高架3号/TEL製版部⑤0558写植部⑥4416』
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