KOBECCO(月刊 神戸っ子) 1961年3月号

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●ノですね。メキシコ湾に入ったら不夜城マイアミの街の光を目当にする。夜でも十浬沖から見えますよ。本当はマイアミに寄って、私の細菌をパッパッとビキニスタイルのアメリカ美人にかけておいた方が道順としていいんですが、アメリカよりはキューバーの方がカンカンだから水着美人は双眼鏡でのぞき見するだけにしてと…マイアミの燈台が左舷三十度まで移ったら、針路を真南にとる。約百四十浬走ったらハバナ港の入口にあるⅢ王城の高い塔が見えますよ。いまは死刑場ですがね。役人に一ドル袖の下を掴ませるとピストルで死刑執行をやる現場を見せてくれます。もっとも革命前の話でしたけど。海からそそり立った城砦の石垣が切れるとすぐハバナ公園が見え、まっ昼間から抱き合っている姿が木蔭の下全部に。ぼんやり見ていたら大変、港の水路は狭いんですからね。たいていの船は、ここでエンジンを止めて水先案内人を待つんですが、私は密航船で行くんだからそうは行かない。第一、船を止めて抱き合っている男女に見とれているなんて、私の趣味じゃありませんよ。私はその点は直接接触の方が性に合ってましてね。ところで水路を通過して港内に入ると、雑貨、重量物砂糖の順に岸壁が並んでいて一番奥の街に近い所がヨットハーバー。密航者は承んなここから上陸します。警戒は一番厳重なんですが、袖の下が一番利くからなんです．ハスポートだって金さえだせば役人が偽造してくれるし懐がさびしくなった頃にはその役人が掴えてくれて、官費本国送還という段取りにできています。勿論、私もヨットハーバーから上陸します。一週間あれば、保有細菌をぱら撒くのには充分ですからね。道路一つ越すと、すぐそこにカスバがあるんです。そらあ女も世界じゆうの人種でより取り見どり、然し、その女達では数が多過ぎて、カストロ氏に伝わるまで菌が薄くなるといけないから、真直ぐに通り抜けて、官公庁街の裏側になる高級住宅地街に行きますよ。「お前なんか、相手にするかですって？」冗談じゃないハポネス（日本人）は少々小形だが最高ですよ。耐久力といい感触といい。ええ－と、なんの話でしたつけ．そうそう、どうでもいいや、チャランポラン病にする細菌で、世界緊張緩和に役立てる話でしたつけね。どうやら培養体である私自身が第四期症状になって●‘〃きたらしいです。最終的にはこの菌に侵されると思考分裂発情症になるんです。とにかく、そういう訳で、黒髪黒耀石の瞳、真白な肌の美人を中間体にして、この菌をカストロ氏に植付ける次にワシントンに行ってケネディ氏の周囲に。ハラパラと撒く。この方はほんのちょっとでいいと思うんです。菌が利きすぎると、ドル防衛のためには、日本経済の三つや四つ、破滅したってどうってことないやなんて、かって池田首相に利き過ぎた時のように放言されては日本が困りますからね。それから、大西洋を渡ってアルジェリヤに行き、民族主義と国家主義者に濃度菌を叩きこんでグニャグーーャにし、コンゴを廻って、ラオスに行く．ラオスでは左右両思想主義者に……すいません。ちょっと待って下さい。「おい、ママ、いま話の最中なんだ。赤ん坊を泣かすな！うるさい〃．」「なにい、年児で双児で、いや双児で年児ですから四部合唱で、うるさいのはあたりまいだと。それより、暖くなってきたのに、一日じゆう家にいて、昼間っから酔払ってゴロゴロしてるんだってｌ怒ってやらあ」「よおし、そうずけずけ云われたんじや、私だってカンカンだ。酔って悪いですか、酔って、こう暖かくなってきては昼だろうと、朝だろうと、眠くなりますよ、だいたいママはね」ちょっと待って下さい、ちょっと、どうもおかしい。夫婦間の緊張緩和には、この菌は効力はなかったのかな第一ですよ、二年間で子供が四人もできたとなると：…．変だな、確かに興奮している時は、細菌の効力は最高に発揮されるんですがね、たしかに、弱りました、こいつは：…ｉ終Ｉ（作家）３ｆｌ凸』１９１可

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