KOBECCO(月刊 神戸っ子) 1961年3月号
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蕊…識>尋禽一.燕.:.もう春だというのに、相変ずラオスは硝煙臭いし、アメリカとキュー・ハも目に角を立ててやり合っている。コンゴもアルジェリヤも。そこで、私が飼っている細菌をぱら撒いてきたらと、考えるわけです。「どんな細菌だって?」そうは簡単に教しられませんね何しろ私が自分の体を実験台にして培養してきた細菌ですからね。ちょっとだけ発表すると、繁殖力は非常に旺盛です。時に興奮している時は、いち早く脳神経を侵します。その第一期症状は、何も彼も面倒臭くなって口先でチランポランを並べて、行動力がなくなる。丁度、眠ったい春の午後ゑたいなもんです。第二期の症状は、国家意識とか思想とか、とにかくむずかしい事は全然考えなくなる。そして、第三期に入ると、「どうでもいいや、何んでもかまわぬ、仲好く行こうよ、チャッチャッチャ」といった具合に踊りだします。こうなったら、細菌が完全に効いてきたわけでしめたもの。すぐに伝染夢延します。もう御存知かも知れませんが、日本国民の中にもだいぶ、この菌に侵かされている者があるでしょう。ですが、どうも日本人の場合春だ、桃や桜が咲くと云うのに/細野耕一一一ぁ181カット貝原六睦同体質のせいが、劣性遣伝になるのでしょうかね。チランポランを云う事や、忘れっぽくて、どうでもいいやといった点ばかりが強調されているようです。然し、免疫性のない外国人には完全に利きます。ただし問題が一つある。それは運搬方法なんですよ.何しろ培養体、つまり私から直接・ハラ撒かないと、どうしても菌の濃度が薄くなるし、効果も弱くなるわけです。そこで考えたのですが、船を一隻、買うかチャーターするかして手に入れる。なあにポロ船でいいんです。どうせ、売れない原稿書きlヘッポコ小説家の私の事だから、暇は馬に喰せる程、充分あることだし、太平洋の青い海を楽し承ながら、のんびりと行ってきますさ。海はいいですよ。第一目的地はキューバーですかね。一番緊張しているようだから。「航路を知っているかって?」任かしといて下さい。十三年間も外国航路をやっていたんですよ。太平洋ぐらい眼をつぶっていたって行けます。世界じや、どこの国のどの港だって大低知っているし、その港のどこに行けば美人に逢えるといった事まで詳細に暗記していますよたとえば、細菌をバラ撒きに行くキューバーはハバナ港⑮ア
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