6月号

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第120回
熱がある時は診察前に必ず電話連絡を
発熱等診療・検査医療機関のかかり方
─熱がありお医者さんにかかりたい時、どうすれば良いですか。
山根 現在、発熱などの症状があり、新型コロナウイルス感染症等を疑う方の診察は、感染対策が施され、適切な診療・検査体制が整った発熱等診療・検査医療機関が主に担っております。まずはかかりつけ医に電話で相談してください。かかりつけ医がない場合は、発熱等受診・相談センターへ電話連絡願います(図)。連絡なしに直接医療機関へ行くことは絶対におやめください。
─なぜかかりつけ医にも電話連絡が必要なのですか。よく知っている先生なのですが。
山根 かかりつけ医が発熱等診療・検査医療機関でない場合は診察できないことがあるからです。その場合はかかりつけ医から発熱等診療・検査医療機関を紹介してもらうことになります。かかりつけ医が発熱等診療・検査医療機関である場合でも、発熱患者の診察時間を指定していることが多く、受入準備も必要ですので、直接受診せずに電話して指示に従ってください。
─そもそも、発熱等診療・検査医療機関とはどのような医療機関なのですか。
山根 昨年、新型コロナウイルスの国内感染が発生しはじめた頃、院内感染や風評被害の影響を危惧して発熱患者の診察を取りやめる医療機関が多く、熱が出てもお医者さんにかかれない人は多かったですよね。また、昨年の秋頃にはインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行も懸念されました。これらの状況を受け、感染症やインフルエンザの疑いがある患者さんを診察・検査する医療機関を発熱等診療・検査医療機関に指定しました。指定にあたっては、必要な検査体制を確保している、医療従事者の十分な感染対策が講じられている、発熱者等が他の疾患の患者と接触しないよう動線を分離しているなどの条件があります。
─結局、インフルエンザとの同時流行はなかったみたいですね。
山根 はい。昨年の秋はインフルエンザの流行がみられず、兵庫県でもインフルエンザの患者さんは一昨年の約0.1%と驚くくらい少なかったんですよ(表1)。

(表1)インフルエンザの発生状況(出典:兵庫県)
─発熱等診療・検査医療機関ではどのような感染防止対策が施されていますか。
山根 発熱の患者さんと一般の患者さんを分離しています。診察室を分けたり、駐車場にプレハブやテントを設けそこで発熱診察をおこなったりなど空間的な分離で対応する医療機関もあれば、スペースの都合などから発熱と一般で診察時間を分ける時間的な分離をおこなっている医療機関もあります。また、発熱等診療・検査医療機関には必要な設備導入に対し補助が出ていますので、飛沫やコロナウイルスをほぼ完全に捕集するHEPAフィルター付の空気清浄機を用いた陰圧室やクリーンパーテーションなどの設置も進んでいます。
─なるほど、新型コロナ感染症の感染防止対策がしっかりとなされているのですね。
山根 発熱等診療・検査医療機関の指定にあたっては、きちんとした感染防止対策が講じられていることが条件になっています。
─発熱患者とそのほかの患者が接触することはないのですね。
山根 その通りです。ですから、持病がある方や体調がすぐれない方も安心して診察を受けてください。いま、体調が悪くなってもコロナを怖れて通院をやめる方もおられますが、過度な受診控えは病状悪化にも繋がります。何か不安がありましたら、かかりつけ医にご相談ください。
─県内に発熱等診療・検査医療機関はどれくらいありますか。
山根 昨年12月の段階で1000以上の医療機関が発熱等診療・検査医療機関に指定され、うち他の医療機関などからも受け入れ可能な医療機関は290か所あります(表2)。
その後も継続して募集しているので、現在はもう少し増えているかもしれません。

(表2)兵庫県の発熱等診察・検査医療機関の指定状況(出典:兵庫県)
─どのクリニックが発熱等診療・検査医療機関なのかインターネットなどでわかりますか。
山根 発熱等診療・検査医療機関のリストについては、他県では公表しているところがあるようですが、兵庫県では公表していません。その理由として、患者さんが殺到するおそれがあること、風評被害の可能性があることが挙げられます。しかし、各医療機関では情報を共有しており、かかりつけ医や相談センターから発熱等診療・検査医療機関を紹介して発熱診療を受けていただく形になっています。
─あらかじめ電話で連絡すること以外に、発熱時の受診の際に注意することはありますか。
山根 感染拡大防止のため、受診時には必ずマスクの着用をお願いいたします。また、来院時には公共交通機関の使用を控えるようにしてください。診察を受けるにあたり不安もあるかと思いますが、発熱等診療・検査医療機関ではさまざまな感染防止対策を施していますし、診察や検査は普通の診察と大きくは変わりませんので、安心して受診してください。

(図)相談・受診の流れ(出典:兵庫県)