12月号

ハーグ、パリ―ゴッホを変えた「2つの時代」―『ゴッホ展』 1月25日より 兵庫県立美術館で開幕!
東京・上野の森美術館で、3週間で10万人の来場者を記録した「ゴッホ展」が、2020年1月に兵庫県立美術館にやってくる。本展は東京、神戸のみの開催となる。
今回の展覧会は、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853︲1890)が「芸術家たちから受けた影響」をテーマに、オランダ・ハーグでの時代と、パリで印象派に出会った時代とを分けて紹介する。27歳で独学で絵を学び始めたゴッホは、ミレーに憧れ、農民画家を目指す中で、農村の人々や自然を描く「ハーグ派」の画家たちに習う。その集大成ともいわれる作品が、1885年に描かれた『ジャガイモを食べる人々』。ゴッホはこの油彩画を描き終えた後、家族や知人に配るために同様のリトグラフ(版画)を制作するが、自身で油彩作品を思い出しながら版にそのまま描きこんだため、本来の作品とイメージが逆になっている。本展ではこのリトグラフの一枚を展示。これまであまり焦点を当てられることのなかったハーグ派時代のゴッホの作品と、彼に絵画を教え、唯一の師匠といわれるマウフェなど関連する画家たちの作品も展示される。
その後、ゴッホは弟テオを頼ってパリに出て「印象派」に出会い、その豊かな色彩に魅了される。印象派時代の代表作である『糸杉』(メトロポリタン美術館蔵)が7年ぶりに日本で紹介されるほか、ピサロ、モネ、セザンヌ、ルノアール、ゴーギャン、モンティセリらゴッホにゆかりのある印象派の画家の作品なども展示。約80点の作品のうち、ゴッホの作品が約50点、ハーグ派と印象派の画家たちの作品が約30点で構成される。それらの作品は、世界10か国27か所から寄せられ、日本初公開作品も含まれる。
「ゴッホの画業は、27歳で画家を志してから亡くなるまで、たった10年間しかありませんでしたが、その10年間で彼は命をかけて絵画に挑みました。今回の展覧会では、ゴッホがいろいろな人々と交流し、ときにぶつかりながら描き続け、生命力あふれる糸杉に代表される彼ならではの印象的な筆づかい、豊かな色彩など、自身の作風を確立していった、その過程が見られる展示構成となっています。ゴッホと画家たちが送りあった手紙の一部もあわせてご紹介しますので、ゴッホの言葉を通して作家を見てみるのも、おもしろいのではないでしょうか」と、兵庫県立美術館学芸員の小野尚子さん。日本でもファンの多いゴッホが高い評価を得た印象派時代だけでなく、大地に根ざした農民たちの姿を描いたハーグ派時代の筆づかいが一堂に会する本展は、これまでにない感動を呼ぶものになりそうだ。

フィンセント・ファン・ゴッホ《糸杉》
1889年6月 油彩・カンヴァス 93.4×74cm
メトロポリタン美術館
Image copyright © The Metropolitan Museum of Art.
Image source: Art Resource,NY

フィンセント・ファン・ゴッホ
《ジャガイモを食べる人々》 1885年4-5月
リトグラフ(インク・紙) 26.4×32.1cm
ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag

フィンセント・ファン・ゴッホ《農婦の頭部》 1885年 油彩・カンヴァス 46.4×35.3cm
スコットランド・ナショナル・ギャラリー
© National Galleries of Scotland, photography by A Reeve

フィンセント・ファン・ゴッホ《麦畑》 1888年6月
油彩・カンヴァス 50×61cm
P.&N.デ・ブール財団 © P. & N. de Boer Foundation

フィンセント・ファン・ゴッホ《薔薇》 1890年5月 油彩・カンヴァス
71×90cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー
© National Gallery of Art, Washington Gift of Pamela Harriman in memory of W. Averell Harriman
小野 尚子さん
(兵庫県立美術館学芸員)
ハーグ、パリ―ゴッホを変えた「2つの時代」― 『ゴッホ展』
■会期 2020年1月25日(土)~3月29日(日)
■会場 兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
■時間 10:00~18:00 ※金・土20:00まで(入場は閉館30分前まで)
■休館 月曜日(ただし2/24〈月・休〉開館、2/25〈火〉休館)
■料金 一般1,700円、大学生1,300円、70歳以上850円、高校生以下無料
■交通 阪神「岩屋駅(兵庫県立美術館前)」から南へ徒歩約8分
■お問い合わせ TEL. 078-262-0901